わたしがタイストラップを思いつくきっかけとなったのは、父のループタイを見たことです。それまでループタイというものに対して、まったく興味を持ったことがありませんでした。なんとなく年寄りじみているような気がしていたからです。しかし父のループタイにはアンモナイトの化石がしつらえられていました。それを見たとき、わたしは自分でしてみようとは思わなかったものの、アンモナイトのようなカッコいいものをループタイではなくもっと違った形で身につけられないかと思ったのです。まず考えたのは普通のネクタイに装着することでしたが、それだとタイタックのようにせいぜい直径1〜2cm程度のものしか大きさ的に無理でした。そして試行錯誤のすえに行き着いたのが、ネクタイの結び目の位置に代わりとしてアンモナイトの化石を置くことができないかということです。つまりループタイと普通のネクタイの合体というか融合です。しかしさらに試行錯誤は続きました。ネクタイを普通に結んだうえで、その上にアンモナイトを乗せるのはまったく現実的ではありませんでした。ではネクタイを結ばずに、直接結び目の代わりにアンモナイトを装着するにはどうしたらいいか。ループタイのような細いヒモ状ならいざ知らず、普通のネクタイ幅ではどうしても難しいのです。そしてついにタイストラップという形にいたりました。タイストラップというのはわたしがつけた名前です。ネクタイを、結ぶのではなく皮革製のストラップで留めるという意味で名付けました。そうすることによって、アンモナイトの化石をはじめとしてサメの歯やさまざまなメタルフィッティングをストラップ上に装着することができるようになりました。そればかりか、皮革製のストラップそのものにカービングという彫刻を施したり、絵付けを行うことも可能となります。その結果、現在のようにさまざまな形の作品を産み出すことができるようになったのです。